ふたわ✿産婦人科

千葉県船橋市にある病院の産婦人科。産婦人科医・看護師・助産師によるブログ。現在、分娩休止中ですが再開予定のため、医療・保健活動は継続しています。このブログでは、産婦人科にまつわることなら病気のことだけでなく、他人には聞きづらいこと、ちょっとした疑問にお答えしていきます。個人的な質問にはお答えできません。

授乳中だから薬は飲めない??

 風邪・頭や胃などの身体の痛み・便秘・下痢などなど…日々の育児に追われ、授乳中に体調を崩してしまう事ってありますよね?

症状が軽く、薬を内服せずに過ごせる事もあると思いますが、例えばある朝、寒気と熱があり体調が優れません。

なんだか頭も重ダルイ…「薬を飲みたいなぁ。」と思うほど症状が辛い時、あなたはどのように考えるでしょうか。

 

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《Aさんの場合》

 

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「よし!気合いでなんとかするわ。病は気からって言うじゃない。そうよ!これは気のせいなのよ。薬を飲まず治るまで過ごすわ!頑張れ私(T-T)」    

    

《Bさんの場合》

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 「薬も飲みたいし、でも授乳が・・・。どちらか選ぶなんて酷すぎるわ(泣)私にはあなた達が必要なのに・・・!でも現実は残酷ね。わかったわ・・・。私は薬を選ぶ!しばらくお別れね。さようならおっぱい・・・」

 

《Cさんの場合》

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「結構辛くなってきたなぁ…。薬飲もう。」

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~その後の様子を見てみましょう~

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Aさんは体調が辛い中、育児に追われ、家事もこなし・・・気力だけで自分を奮い立たせて頑張ります。

全ては赤ちゃんの為!母強し!と言いたい所ですが、あとどのくらい気力が保てるでしょうか。

さらに悪化してしまうのではないでしょうか?疲労・ストレスなどもある中ですから尚更です。

 

 

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Bさんは薬を飲む代わりに、授乳をしない・おっぱいをやめる選択をしました。

薬も効き始め体調は楽になり、「さぁ!復活よ☆」と、いつもと変わらない日々を過ごそうとしていた矢先。

 

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これは大変!!授乳を止めていたおっぱいはどんどん溜まります。

そして搾乳などせず体調も悪かったこともあり、乳腺炎を引き起こしやすくなっていたのです。

乳腺炎がさらに悪化した場合、解熱と炎症止めとして薬が処方されることもあります。そして乳腺炎の一番の対処法は赤ちゃんに溜まった母乳を飲んでもらうことが大切です。

さぁ、Bさんは困りました。「薬を飲まなきゃいけないのに、授乳もしなくちゃいけない?私はどうしたらいいのぉ!?」

 

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Cさんは薬を内服し今まで通りに授乳をしました。

薬も効いて体調も次第に戻り始め、Cさんは短期間ですっかり良くなり、いつもと変わらない生活を送り始めました。

 

このような3名の選択とその後の経過、皆さんはどう思いますか?

 

専門機関の情報を参考にしましょう

よく、母乳はママの血液から作られているので、薬を内服すると血液中に薬の成分が流れ薬剤の混じった母乳を飲ませてしまい、「赤ちゃんに影響するのでは」と考える方が多いようです。

また、市販薬などにも注意書きとして「授乳中の方は医師に相談」と書かれていることがほとんどなので、尚更不安になってしまいますよね。

 実は、国立成育医療研究センターによる「授乳中の薬」についての研究結果では、解熱剤・痛み止め・抗菌薬などの安全性が証明されています。

そして、禁忌な物は抗がん剤精神疾患で長期使用される薬などの一部だとわかっています。

 下記のサイトはこれまでの科学的な情報もとに評価を行い、授乳期でも安全に使用できると考えられる薬の紹介です。

妊娠と薬情報センター:授乳中の薬の影響 | 国立成育医療研究センター

 

 

 

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安全と言われているけど、母乳に薬は混ざらないの??

  時々、薬を飲んでから1~2時間空ければ良いのでは?と考える方もいるようですが、薬の種類や1日に飲める回数の違いによって、身体から薬剤が排出される時間は様々です。

そして、確かにママが内服したお薬は血液を通し母乳に移行します。

しかし、その量は非常に少ない量であり、限られた薬(禁忌とされている薬)以外は、赤ちゃんへ影響を及ぼす程の量ではないのです。

 

最後に・・・

どうしても育児中は、自分のことを後回しにしてしまい、体調が悪いときでも赤ちゃんのことを第一に考えているからこそ、我慢をしてしまいますよね?ママだって辛いときは辛いんです。

また、産婦人科以外の医師の中には、授乳中の方に使用できる薬に対して、あまり詳しくない場合もある為、処方できなかったり、「産婦人科の医師に確認して下さい。」と言われてしまうケースもあります。

その際は使用できる薬剤の表を活用して頂いたり、下記の授乳中の薬についての専用電話相談窓口を活用してみて下さい.ね。.

www.pmda.go.jp

 

飲める薬もあるのです。授乳を止めなくても大丈夫な薬もあるのです!

早く症状が落ち着いて、笑顔のママでいられる応援をさせて下さい。