性と生殖に関する健康と権利 ~妊娠編2~
前回は女性がライフプランを立てること、実現することの大切さをお話しました。
皆さん、自分を主役にライフプランを立ててみましたか?生殖適齢期の方は、行動に移せそうですか?
今回は「妊娠までにしておきたい心と体とお金の準備」についてご紹介したいと思います。
1、まず体の準備。
①無月経や月経不順はありませんか?
→卵巣機能不全が考えられます。ストレスや体重減少などの原因は無いか等の問診や、エコー・採血で分かります。
②生理痛はひどくないですか?
→子宮内膜症や子宮筋腫などの可能性があります。それらは不妊症の原因にもなります。早めの治療が大切です。(生理痛に関しての過去記事↓)
③望んだ時期に妊活ができるように、バースコントロール(避妊等)をしていますか?
→産むか産まないかは女性の権利。とはいっても、人工妊娠中絶は女性を心身ともに傷つけます。たとえその時は自分で中絶を選んだとしても、また体は回復したとしても、心の傷痕は数年経ってからもジクジク痛むことがあるかもしれません。
「避妊は男性任せにせず、自分に合った避妊方法を実行」
④望んだ時期に妊活ができるように、性感染症予防をしていますか?
→性感染症(クラミジアなど)は不妊の原因になります。HIVなどは妊娠中から赤ちゃんに感染してしまうこともあります。全ての性感染症は予防できないとしても、重大な感染症はコンドームを正しく装着することで予防できます。
性感染症を予防は「自分でしっかりと」
(コンドームの正しい着け方は↓)
⑤婦人科検診を受けていますか?
→20~30代という若い年齢でもかかりやすい子宮頸がん。ほとんどが性交渉により感染する「ヒトパピローマウィルス(HPV)」が原因です。子宮がん検診を受けましょう。
“私はヴァージンだから大丈夫”・“得に自覚症状ないしなぁ”と言う方も子宮筋腫や卵巣のう腫、子宮内膜症など、不妊に関係する病気が隠れているかもしれません。今は〝ブライダル検診“なるものが流行っていますが、プロポーズされてから病気が見つかって治療となると、タイムロスが生じます。
婦人科受診はハードルが高いですよね。でも、実は産婦人科って一生のお付き合いをする診療科なんです。近所の評判や口コミを参考にしたり、実際に問い合わせをして今のうちから「信頼できるかかりつけの産婦人科」を見つけておいて下さいね。
⑥赤ちゃんのために禁煙は出来そうですか?
→昔に比べて日本でも禁煙・分煙化は進んできています。が、他の先進国と比べるとまだまだな状況です。医学界では癌や脳や心臓の致死率の高い病気の原因のひとつに喫煙を上げています。妊娠中の能動喫煙・受動喫煙は母児に悪影響を及ぼします。
「禁煙しましょう」と私たちが口でお伝えするのは簡単ですが、依存性の高い物質を一定期間吸っているスモーカーにとっては、「気合いで禁煙」というのはとても難しい事です。〝赤ちゃんができたらやめる”・〝妊活始める時に止める″は〝明日から甘いものをやめる″のダイエッターと同じ位大変なことです。(ダイエット失敗者談)禁煙は始めるのが早いほど成功しやすいです。
でも、もう気合いではどうにもならない本数をどうにもならない年数吸っている方には、吸いながらでも徐々にやめられる薬もあります。
家族やパートナーと一緒に「禁煙外来」へ。
2.そして、お金の準備。
将来に向けて、貯蓄はしていますか?
妊娠にかかる費用は、ほとんどが「自費診療」!!
「妊娠は病気じゃない」とよく聞きますが、早産・妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全・・・妊婦健診で突然入院や他院への母体搬送を言い渡されることは少なくありません。場合によってはそのまま予期せず緊急の出産を余儀なくされることも。治療が必要な場合は健康保険の適応(自費の3割負担など)となりますが、生まれたばかりの赤ちゃんには健康保険証がありません。
戸籍ができて、「子ども医療費助成制度(自治体によって名称や助成方法が異なります)」や健康保険証が届くまでは、月末毎に全額自己負担分の医療費の請求書が届くことになります。
出産育児一時金は、現在は「出産育児一時金直接支払制度(自分で大金を用意しなくて済む制度)」として、自分のもとに届く前に健康保険組合から分娩施設に支払われます。
親戚や知人からのお祝い金は一時的には助かれるかもしれませんが「内祝い」を返すことがマナーになっています。
実際人工妊娠中絶を決断する方の理由には「経済的に無理」という方も少なくありません。赤ちゃんが無事生まれた後には、「約20年×子の数」の養育費がかかります。
現代の日本、お金はあって困ることはありません。
なんだか、オカンみたいなおせっかい話をグダグダ書いてしまいましたが・・・。
仕事や趣味の目標は、第2第3の人生として、やる気しだいでいつでもかなえることができます。
だけど、「妊娠」に関してはタイムリミットがあるのが現状です。
「備えあれば憂いなし」だという事だけ憶えていて頂けたら、産婦人科スタッフとしてはありがたいです。
お金以外のご相談はぜひ産婦人科外来へ。