ふたわ✿産婦人科

千葉県船橋市にある病院の産婦人科。産婦人科医・看護師・助産師によるブログ。現在、分娩休止中ですが再開予定のため、医療・保健活動は継続しています。このブログでは、産婦人科にまつわることなら病気のことだけでなく、他人には聞きづらいこと、ちょっとした疑問にお答えしていきます。個人的な質問にはお答えできません。

母乳と食事の都市伝説

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食欲の秋ですね。

旬なものを美味しく食べたい!でも母乳育児しているから...何でもかんでも食べて乳腺炎にならないか心配。というママもいるのではないでしょうか。

 

乳腺炎になる食事はあるのか?

母乳外来で「脂っこい食事やケーキを食べたから乳腺炎になったのでしょうか」「食事で気を付けた方が良いものはありますか」と質問を受けることがよくあります。

母乳がドロドロになって詰まる、食事量や内容で母乳の成分や量が変わる、という印象があるようです。

 

結論から言うと

特定の食事(脂っこい食事やケーキ等)=乳腺炎

というのは都市伝説!!医学的根拠はありません。

 

 

母乳の構成成分

母乳の88%は水分です。他には、炭水化物、脂肪、たんぱく質の順に多く含まれます。

中でも気になる脂肪ですが...母乳中に3.5%

ママの食事によって脂肪の構成成分は変化しますが、母乳中の脂肪の量は変わらないことがわかっています。ですので、脂肪分をとりすぎたからと言って母乳がドロドロになることやその為に乳腺が詰まることはありません。

母乳は血液から造られていることをご存知ですか?血液は乳管より細い毛細血管を通ってきています。食事が原因で血液がドロドロになったら乳管より先に毛細血管が詰まってしまうことになりますよね。

授乳期(30歳)の食事摂取基準は2100~2650kcalですが、栄養状態の良いママが1日の食事摂取量を1500kcalに減らしても母乳の量は変わらないといわれています。逆に、それ以上に減らしてしまうと、今度はママの健康に影響が出る可能性があるのです。

乳腺炎を気にして食事制限をする必要はなく、バランスの良い食事が1番です。

 

 

乳腺炎の原因

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では“なぜ乳腺炎になってしまうのか”ですが、作られたおっぱいを赤ちゃんがうまく飲みとれていないことが主な原因です。具体的に上げると、

  • 赤ちゃんが乳首をうまく吸えない
  • いつもと授乳の姿勢や赤ちゃんのポジションが違った
  • 離乳食が進んできて、母乳回数が減った。

など、こういったことにより

作られた母乳>飲みとる量

のバランスになった時に母乳が溜まり、乳腺炎をひきおこす原因になります。他には、ママの疲れやストレス、下着や抱っこひもなどによる締め付けや圧迫などが原因といわれています。

 

乳腺炎かなと思ったら

乳腺炎になってしまった時には、赤ちゃんに飲みとってもらうのが1番。赤ちゃんがおっぱいを深く吸えているか、授乳の姿勢は大丈夫かを確認して頻回に吸ってもらいましょう。疲れがたまっていたら、周りの力を借りながら休息をとることも大切です。

赤ちゃんが飲みとるのが難しかったり、頻回に吸わせても改善しない場合には母乳外来の受診をお勧めします。

 

 

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参考文献●水野克己、水野紀子:母乳育児支援講座、南山堂、2011年