10代でピルって大丈夫なの?
娘さんにピルをおすすめすると、お母様から聞かれる質問です。
諸外国に比べると、日本はピル(経口避妊薬)の普及が遅れています。
例えばフランスでは普及率40%以上であるのに比べ、日本では3.5%という報告もあります。
これは、ドラッグストアでピルを買うことができる諸外国に比べ、日本では医師の処方が必要であることも原因かと思います。
コンドームは、確実に使用したとしても妊娠することがあり、その確率も低くはありません。それに対し、確実に内服すればほぼ100パーセントの避妊効果があるピル。女性の意思で避妊できることや、避妊以外の利点(月経痛・月経前症候群の改善、など様々)もあるのですが、あまり普及していないと思います。
今回は、ピルに関する素朴な疑問、
‘10代でピルって大丈夫なの?’にお答えしたいと思います。
ピルの対象者は
生殖可能年齢にある女性
つまり対象年齢は<初経がきて数ヶ月~閉経まで>
ただ、40歳以降は副作用発生のリスクから、慎重投与とされています。
これは、もとから40代以降は疾患のリスクが高くなり、ピル内服によりそれを助長する可能性があるからです。
40歳以降で、出産を終えた女性の避妊は、IUS(子宮内避妊システム)などの方法がベターといえそうです。
ということは・・・若い世代こそ、もちろん10代でも、<避妊の第1選択はピル>
であっていいと思います。
なぜ10代でピルは普及していないの?親心と副作用
しかし現実には、子どもを産んでも育てられないうちはセックスするべきではないという大人の理想像もあります。
実際、娘さんが交際している相手がいたとします。2人の関係は認めてあげたとしても、「妊娠だけはしないでほしい」、と思う親心ってありますよね。
10代でピルなんて、と思う理由は、ピル内服を認める=子どものセックスを容認する、ということではないのだけれど・・そこに疑問があるからではないでしょうか。
しかし、1度セックスのある関係になってから、元のセックスのない関係に戻ることは考えにくいですよね。
その他、よく質問されるのは、吐き気などの副作用に関する心配です。
現在普及している低用量ピルは、昔の中用量ピルに比べて副作用が抑えられていることがメリットです。
当院で主に処方されているトリキュラー錠の添付文書によると、主な副作用
は下記の通りです。
不正子宮出血 |
3.8% |
悪心 |
3.4% |
乳房痛 |
1.1% |
嘔吐 |
0.9% |
頭痛 |
0.7% |
どれも発生頻度は少ないと言えそうです。
その他、まれではありますが重大な副作用としては、静脈血栓症があげられます。添付文書によりますと、ピルを内服している女性は内服していない女性に比べ、発生頻度が
3.25~4.0倍高くなるそうです。ちなみに静脈血栓症の発症率は妊娠中にも高くなり、非妊娠時と比べて5倍以上といわれています。つまり、妊娠したほうがハイリスクということになります。
妊娠したほうがハイリスク
娘さんがもし妊娠したら、と考えますと、若年妊娠はそうでない場合と比べて妊娠自体
がハイリスクで、早産・低出生体重児・妊娠高血圧症候群のリスクが高く、母子ともに命に関わる危険にさらされる可能性が高まると言っても過言ではありません。
おわりに
妊娠したことを誰にも伝えられず、悲しい事件に発展するというニュースが後をたちません。もし、中絶の選択をしたとしても、手術によるリスクは避けられず、心の傷は一生背負うことになります。
望まない妊娠への不安を、毎月抱えている人もいると思います。
避妊の選択肢は一つではありません。
今回は疑問に少しでもお答えできれば、と思いましたが、なにかありましたら産婦人科外来にいらして下さい。医師の診察の前後にお話しをお伺いすることもできますので、気軽にご相談下さい。
参考文献)・産科と婦人科 2014.8. vol.81 No.8 診断と治療社
特集 女性と静脈血栓塞栓症