タバコについて
タバコによる健康被害
肺がん、胃がんなど様々な健康被害をもたらすことがわかっているタバコ。
タバコの主流煙は約5300種類の化学物質を含み、そのうち約70種類は発がん性があるといわれています。副流煙の成分も主流煙とほぼ同じですが、主流煙より副流煙の方が有害物質を多く含む場合もあることが指摘されています。
WHO(=世界保健機構)は、毎年500万人が能動喫煙によって、60万人が受動喫煙によって死亡し、2004年に死亡した児童のうち28%は受動喫煙が原因であると指摘しています。日本での研究によると受動喫煙を原因とする疾患により年間1.5万人が死亡しているとの報告があります。
女性・子供への影響
私たち産婦人科スタッフがここでお伝えしたいのは特に女性や子供たちへの影響です。喫煙がもたらす健康被害はがんだけではありません。(ここでの「喫煙」は能動喫煙・受動喫煙の両方をさします。)
まず、女性が喫煙することにより、妊孕性(妊娠する力)が低下するといわれています。妊娠中に喫煙をすると、自然流産・早産(妊娠36週以前での出産)や異所性妊娠(子宮以外での妊娠)のリスクが増加します。
当然、お腹の赤ちゃんへも影響します。ママと赤ちゃんをつなぐ臍帯(へその緒)は赤ちゃんがお腹の中で生きていく上で必要な酸素や栄養を運んでくれる命綱です。タバコは血管を収縮させる作用があります。その作用により、臍帯の血管も収縮し、赤ちゃんにうまく酸素や栄養を運べなくなります。そのことにより、低出生体重児(出生時体重が2500g以下)の可能性が非喫煙者と比較し2倍に増加、周産期死亡(妊娠28週以降の死産と生後1週間以内の早期新生児死亡)のリスクも増加してしまいます。
産まれてきた子供への影響(受動喫煙によるもの)としては、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因の1つといわれています。 ※SIDSは、何の予兆や既往歴がないのにもかかわらず、乳幼児が死に至る病気です。平成27年度には96名の赤ちゃんがSIDSでなくなっており、乳幼児期の死亡原因の第3位となっています。
受動喫煙防止シンボルマーク - すぐ禁煙.jp(ファイザー)
妊娠中、母親が喫煙していたことにより乳幼児期の肺機能が低下したり、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの子供の発達に関連するともいわれています。このように喫煙により数々の影響が出てくるのです。
妊娠したいから、妊娠したからと言って女性・ママだけが禁煙すればよいということはありません。男性・パパはもちろん、おばあちゃんやおじいちゃんにも禁煙をお願いしたいのです。
日本の喫煙規制は遅れている・・・?
そうはいっても、
喫煙者の方は
「自分の身体は自分のもんやー!!」
健康被害があるとわかっていても吸いたい!実際に病気になったとしても吸い続ける!
やめなきゃいけないとは思っていてもどうしてもやめられない。
非喫煙者の方は
他人のタバコで、なんで自分が病気にならなきゃいけないの?
そこらじゅうで吸われると迷惑。
と、両者の意見があると思います。
そこで求められるのがしっかりとした制度!!分煙や一定の限られた場所での喫煙・禁煙ではないでしょうか。
2020年にはオリンピックが開催されます。WHO(=世界保健機構)とIOC(=国際オリンピック委員会)はともに、タバコの無いオリンピックを目指しています。2003年以降のすべてのオリンピック開催地で、原則すべての屋内施設を全面禁煙とする罰則付きの喫煙規制が実施されています。
わが国でも、2020年に向けて屋内全面禁煙を求める機運が高まっています。しかし今現在、罰則規定はなく、世界と比較すると日本は後れを取っていると言わざるを得ません。
禁煙治療について
現在習慣的に喫煙している人のうち、タバコをやめたいと思う人の割合は24.6%、タバコの本数補減らしたいと思う人は33.5%です。
どうしたらタバコを止められるか...
なかなかやめられない喫煙はニコチン依存症ですので、
「よっしゃ!やったるでー!!」
といったやる気や気合だけでは乗り越えられません。
タバコをやめたいと考えている人には禁煙外来をお勧めします。
禁煙治療は禁煙外来を開設している医療機関で受けることができます。一定の要件を満たせば、健康保険で治療を受けることができます。
禁煙希望のある方はぜひ一度、禁煙外来を受診してください。
参考文献・資料
●厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco
●国立国会図書館 調査及び立法考査局社会労働課 宍戸真梨、受動喫煙対策の動向―我が国と海外の屋内公共施設における喫煙規則―、国立国会図書館