ふたわ✿産婦人科

千葉県船橋市にある病院の産婦人科。産婦人科医・看護師・助産師によるブログ。現在、分娩休止中ですが再開予定のため、医療・保健活動は継続しています。このブログでは、産婦人科にまつわることなら病気のことだけでなく、他人には聞きづらいこと、ちょっとした疑問にお答えしていきます。個人的な質問にはお答えできません。

<生理痛、辛くありませんか?~月経困難症~>

 

毎月の生理(月経と言います)に、

「ああ、また来た・・・」

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と憂鬱になる方が多いと思います。

 

憂鬱な原因は

「イライラして周りに当たり散らして後悔する・・・」

「頭痛・生理痛がツライ」

「旅行やイベントにあたっちゃう」

「ナプキンを変えるのがウザイ😡」

といったことなど様々。

 

そんな憂鬱にもかかわらず

「薬は飲まない方がいいと思って我慢していました」

という患者さんの言葉もよくお聞きします。

 

しかし今の医療の主流は

「我慢しない」

「痛み始めたら早めに飲む」

です!

 

今回は、月経開始直前や月経時におこる辛い症状によって、

「学校や仕事に行けない」

「家事が出来ない」

「痛すぎて動けない」逆に「七転八倒

など、

日常生活を送ることが困難になるほどの“月経困難症”についてお話しようと思います。

 

 

*月経困難症とは*

 

1、症状:月経直前や月経中に起こる、日常生活が困難になる程の強い下腹痛や腰痛・頭痛や嘔吐。月経終了とともに消失します。

 

2、原因:原因疾患のない「機能性月経困難症」と原因となる疾患が症状を起こす「器質性月経困難症」があります。

月経は増殖した子宮内膜をはがして、月経血と共に子宮の外に排出させることを言います。その月経血の排出をスムーズるために「プロスタグランジン(PG)」という物質が子宮内膜で作られます。このPGがやっかい・・・!!

 

 

生理痛が「そんなに気にならない」人は、

適度なPG分泌量なため「時々少し痛いかな?」程度で月経血を排出できます。

  

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「機能性月経困難症」の人は、

原因疾患はないけれどPGが過剰に作られてしまい、子宮収縮が強くなって、月経痛が強くなります。PGが頭痛や嘔吐を起こすこともあります。(強い痛みによるに神経反射の場合もあります。)

 

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「器質性月経困難症」の人は、

原因疾患が子宮収縮を妨げたり、子宮内膜が子宮の外で増殖したりすることで、PGが過剰に作られてしまいます。

子宮内膜症では、子宮の外で増殖した内膜が炎症を起こして、肛門痛や性交痛を起こすことがあります。

 

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3、治療:症状や原因で異なりますが、ここでは内服をご紹介。

 

①非ステロイド性消炎鎮痛薬(イブプルフェンやボルタレンロキソニンなど)

→プロスタグランジンの合成阻害効果もあります。

 

②漢方(芍薬甘草湯や桂枝茯苓丸や桃核承気湯や当帰芍薬散など)

→アレルギーなどで①が使えない時や体質改善に使われます。

 

ホルモン剤(ルナベルやヤーズなど)

→子宮内膜の増殖やプロスタグランジンの産生を抑えることで、月経血量を減らしたり、月経痛を軽くします。(子宮内膜症の治療に使われます。)

 

※その他、症状や診断によって医師から様々な治療法を提案されます。

 

気軽に婦人科を受診してくださいね。

 

 

子宮内膜症は早期発見が大切!!*

 

不妊症の原因のひとつに、

子宮内膜症があると言われています。

軽症のうちに診断・治療することで、

不妊症の改善が期待できます。

10代~30代の

「いつか赤ちゃんが欲しくなるかもしれない」人は、

まだパートナーがいなくても、

「忙しいから」「婦人科ってハードル高い」と思わないで、

思い切って婦人科を受診してみてくださいね。

 

参考・引用文献

前田長正:月経困難症とホルモン療法、産科と婦人科2013、8号、P35-39.